食料・農業・農村基本法の第36条に「国は、都市及びその周辺における農業について、消費地に近い特性を生かし、都市住民の需要に即した農業生産の振興を図るために必要な施策を講ずるものとする。」というような記載があります。また、本県の定める、かながわ農業活性化指針にも、大消費地に近い利点、すなわち輸送による制約が少なく、少量・多品目生産が可能であるという利点を生かし、高品質で付加価値の高い生鮮食料を生産するということが掲げられています。
この消費者のニーズに応じた少量生産、高品質、高付加価値というのは、まさに商品のブランド化を図る際の必須要件であり、本県農業も含め、都市農業が、今後、生き抜いていくためにブランド戦略が不可欠であるということをまさに示しているのであります。
ところで、本県では、県内で生産される60品目以上のバラエティ豊かな農林水産物を集め、かながわブランドとして展開しています。そのウェブサイトを見ておりますと、いろいろなことがわかります。
実は横浜の土壌が馬鈴薯の栽培に適していて、県内で主たる産地になっていること、トマトでは、JAセレサ川崎、JAさがみが糖度の高い桃太郎などの完熟品種を有機肥料で栽培していること、相模原台地の黒色火山灰土が一段と粘り気の強いヤマトイモを育てること、県農業総合研究所が昭和36年に育成した赤タマネギ・湘南レッドは我が国の生食用タマネギの元祖であること、ナシの品種である長十郎は川崎で生まれ、現在の主要品種である幸水、豊水も、神奈川県の旧園芸試験場で育成された菊水からつくられたこと、三浦半島で三浦葉山牛という最上級の黒毛和牛を肥育していることなどなど。そのほかにも、高座豚手づくりハムとか相模湾のシラスとか、挙げていけば切りがありません。どれもが生産者や産地の創意と熱意を感じさせる産品ばかりです。
しかし、それらが市場においてブランド力を発揮できているかということになると、話は別です。
ブランド力とは、例えば、スーパーマーケットで湘南レッドとほかの赤タマネギが並んでいたとき、値段が多少高くても、その品質や特徴によって湘南レッドを消費者に選ばせる力のことです。そのために、湘南レッドならではの付加価値や優位性を明確に示し、消費者からの評価や信頼を高めることがブランド戦略の目的となります。
かながわ農業活性化指針には、「かながわブランドの特色を消費者にPRするために、新たなブランド品の基準づくり等を研究・検討し、魅力あるブランドづくりを推進」とありますが、これでは、どのように産品のブランド力を高めていくのかわかりません。また、これからも県内産農林水産物及び加工品をかながわブランドとして認定していくようですが、そもそも県が認定してシールを張ればブランド品になるわけでもありません。
松坂牛や越前ガニ、魚沼こしひかり、関アジ・関サバ、本県の三浦大根のように、地名を冠してブランド化に成功したものはありますが、あくまでその品目に対してのものであります。それも長年にわたる努力の結果、差別的優位性を確立したからであり、それがなければ単なる名前にすぎないのであります。「かながわブランドだから買う」というのは、よほど郷土愛に満ちた県民か、近くでとれたはずだから新鮮と考える人でしょう。それ以外の人にとっては、残念ながら何のステータスもプレミアムも感じることができないのです。
今、県が取り組むべきは、生産者が消費者ニーズに応じた特色ある商品を生み出せるよう支援をすることはもちろんですが、消費者が一つ一つの商品のよさを認識し、ひいてはその商品や生産者に高い信頼を寄せるという構図をつくり上げること、すなわち本来のブランド戦略に着手することであると考えます。
そこで、知事に伺います。
価格は多少高くても品質の高いものを求める都市住民をターゲットに、農林水産物のブランド化を図ることは、本県農業が、今後、生き抜いていくために重要な施策であると考えます。真に実効あるブランド戦略を構築するために、一つ一つの商品に対する消費者の評価が高まるよう、現在のかながわブランドを見直す必要があると考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。
また、ブランド戦略に本格的に取り組むには、それなりの体制が必要です。日常業務の片手間でできるほど甘くはありません。こういう分野こそ民間の力を導入すべきと確信いたしますが、あわせて知事のご所見をお伺いいたします。
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