2.住宅問題について

 <質疑> 民間住宅の耐震化促進について
 1月に発生したハイチの地震では、犠牲者の多くは倒壊した建物の下敷きになったと見られ、まさに「住居の貧困」によって被害が広がった。阪神・淡路大震災でも、低所得者など、耐震性の低い古い木造住宅に住む「社会的弱者」ほど犠牲者が多く発生した。
 県では民間住宅の耐震化促進のため、市町村に対する財政的支援の実施や地域住宅交付金の活用支援を推進するとしているが、これまでの実績について伺いたい。
 また、民間住宅のより一層の耐震化を進めることが重要と考えるが、今後、どのように耐震化を進めようとしているのか、併せて所見を伺いたい。

 <答弁> 松沢知事
 次に、民間住宅の耐震化促進についてのお尋ねです。
 まず、民間住宅の耐震化促進の実績について、であります。
 県では、これまで、市町村に対する県単独の財政的支援として、市町村地震防災対策緊急支援事業を実施しており、平成20年度までの実績でありますが、住宅の耐震診断は29市町で8,207戸、耐震改修は20市町で720戸実施し、市町村への補助額の累計は、約1億9千4百万円でございます。
 このほか、国の地域住宅交付金を活用した支援も行っており、平成20年度までの4か年で、耐震診断を1,981戸、耐震改修を653戸実施し、事業費の累計は約5億2千万円でございます。

 次に、今後の耐震化の促進についてですが、住宅の耐震性の向上を図ることは、地震被害を小さくするために大変重要であると認識しておりますが、個人負担も必要になることから、なかなか耐震化が進まない状況であります。
 そこで、建築物の耐震化を計画的に促進することを目的として、平成19年に県と全市町村からなる「神奈川県建築物耐震化促進協議会」を設置しており、引き続き、この協議会の場を通じて、地域住宅交付金のより一層の活用を働きかけ、市町村による耐震化への取組みの促進を図ってまいります。

 <質疑> 住宅セーフティネットの構築について
 平成18年6月に成立した「住生活基本法」は、国、地方公共団体ならびに民間の住宅関連事業者が主体となり、良質な住宅ストックを形成し、それを将来世代に継承することや、そのために市場メカニズムを十分に活用することなどに重点が置かれている。自力で居住の改善を図れる人ばかりであれば、市場メカニズムの活用も有効だが、低所得層など自力で居住を確保し、または居住水準の改善を図れない人々には公的な援助が必要であり、その第一は公営住宅の供給である。
 また、わが国と欧米先進国の住宅事情を比較すると、わが国の借家の平均住宅床面積は米国の4割、英独仏3国の6割に過ぎない。このような、最低居住水準を満たさない住宅の解消を早急に図っていくべきである。
 そこで、低所得者など「住宅弱者」や、安定した住まいを持たない人々の住宅セーフティネットをどのように構築していくのか、所見を伺いたい。
 また、県として最低居住水準未満世帯の解消に対しどのような目標と計画を持っているのか、特に、県営住宅の居住水準を向上させた上で数多く供給することが有効と考えるが、併せて所見を伺いたい。

 <答弁> 松沢知事
 次に、住宅セーフティネットの構築についてのお尋ねがございました。
 低所得者など、安定した住まいの確保が難しい方々に対しまして、セーフティネットを構築していくことは、重要な取組みであると認識しております。
 そこで、県営住宅では、これまで高齢者や障害者の入居の当選確率を高める優遇措置や、子育て世帯を対象に義務教育修了までの期限付き住宅の提供などに取り組んでまいりました。
 さらに、本定例会に県営住宅条例の一部改正を提案させていただいており、建替えのために募集を停止している住宅を活用して、35歳未満の若年世帯を対象に建替えまでの期限付き住宅を提供するなど、新たな取組みを行うこととしております。
 また、民間賃貸住宅では、平成20年から「あんしん賃貸支援事業」をスタートさせ、高齢者、障害者の方々などを受け入れる住宅の情報を提供しております。

 次に、最低居住水準未満世帯の解消についてですが、県が平成17年度に策定した「地域住宅計画」では、水準を満たさない世帯の割合を平成15年の6%から、平成22年度末までに4%に引き下げることとしております。
 具体的な取組みとしては、県営住宅においては、狭い住宅で人数の多い世帯と、広い住宅で人数の少ない世帯とのミスマッチを解消するため、平成18年度から「住み替え登録制度」を設け、住み替えの促進を図っております。
 また、建替えにあたりましては、今後、一世帯あたりの人数の減少が見込まれますので、少ない世帯人数に応じた広さの住宅の割合を高めることなど、供給のあり方について、検討してまいります。

 <質疑> 県営住宅ストック総合活用計画の見直しについて
 私の地元で、平成22年度に着手されるはずだった県営住宅の建替え事業が「凍結」となった。極度の財源不足の中で、新規事業は見送らざるを得ないというのがその理由である。住民は、老朽化による不都合も辛抱しながら生活しているが、果たして「凍結」は1年で解けるのだろうかと不安を募らせている。
 「県営住宅ストック総合活用計画」の後期計画期間も県の財源不足は続く見込みである。現在の社会経済状況から、県営住宅の整備を求める県民の声はますます高まるものと思われるが、どのように「県営住宅ストック総合活用計画」を見直すつもりなのか、所見を伺いたい。

 <答弁> 松沢知事
 次に、「県営住宅ストック総合活用計画」の見直しについてのお尋ねであります。
 「ストック総合活用計画」では、個々の団地や建物ごとに、建替えのほか、室内のバリアフリー化を行う個別改善、屋上防水や外壁塗装を行う計画修繕などの整備手法を位置づけております。
 今後も厳しい財政状況が続くものと予想されていることから、「ストック総合活用計画」の見直しにあたりましては、県営住宅の一層の長寿命化を推進するとともに、建替えの事業費を平準化する新たな手法を検討してまいります。
 具体的には、長寿命化につきましては、平成22年度から開始する建物ごとの劣化状況などの調査を踏まえ、建設年次や立地条件を考慮した、きめ細かな長期修繕計画を作成し、優先度の高いものから効率的に修繕工事を実施してまいります。
 また、建替えにつきましては、限られた財源で効果的に事業が実施できるよう、民間活力を導入し、民間事業者が建設したものを県が借り上げていく方式など、毎年度の事業費を平準化する手法を検討してまいります。
 今後は、こうした県営住宅ストックの総合的な活用に努めることにより、建替えや個別改善、計画修繕などの整備を効率的に実施してまいります。

 <再質問>
 私は今回、住宅問題について様々勉強させていただく中で、強く思ったのは、居住というのは、生活の根本問題だな、ということであります。例えば在宅介護にしても、子育てにしても、いわゆる健康を維持増進させていくことにしても、居住環境と切り離しては考えられないのかな、と思います。
 憲法第25条には、「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」また「国は、全ての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」とあります。国民の基本的人権としての生存権、そして国の側は生存権の保障義務があるということを謳っているものであると思います。
 住宅というのは、この条文のいうところの「健康で文化的な最低限度の生活」これを保障するための必須条件だと私は思います。生存権としての居住権ということですが、最近ではやっと居住福祉といった学問が大学でも行われるようになってきたと承知しています。私は居住権というのは、国民の基本的人権のひとつであると考えますが、知事の個人的な見解で結構ですので、それについてお答えいただきたいと思います。
 また、もともと低所得者の方が多い公営住宅ですが、近年では高齢者、障害者の占める割合が大変多くなっています。「公営住宅の施設化」ということが言われています。これは本県の県営住宅でも例外ではありません。私も県営住宅にお伺いする度に、本当に課題の多さ、課題の重さに打ちのめされる思いです。知事は現場訪問の中で、子育て世代の優先入居がスタートしたときに、県営住宅に行かれたと聞いていますが、県営住宅の高齢者や障害者の実情をご視察されたことがあるか、もしあるのでしたら、その際どのような思いになられたのか、教えていただきたいと思います。

 <再答弁> 松沢知事
 1問目の質問は、国や地方公共団体が、住宅分野での役割を後退させる中で、住宅弱者がたくさん出てきているが、これは「居住の権利」が謳われている憲法からするとどうなのか、という質問だったと思います。議員ご指摘のとおり、憲法第25条第1項あるいはその2項で、健康で文化的な生活を営む権利ですとか、社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上、推進に、国は生活部面で努めなければいけない、という規定があります。この憲法の規定に従う形で、公営住宅法あるいは生活保護法、あるいはホームレスの自立の支援等に関する特別措置法等々が、関連法として整備されていると認識しています。
 公営住宅は、この「健康で文化的な生活」を支える重要な施策の一つ、大きな施策の一つではありますが、それで低所得者全ての住宅を公的に賄うというものではなくて、関連する施策が全て様々組み合わせて住まいを確保していくことが適切な、現実的な方策であると考えています。
 したがって、今後とも、公営住宅の供給をはじめ、住宅セーフティネットの構築に、一層努めていきたい、と思います。
 2問目は、公営住宅が施設化していると言われている、特に高齢者施設化しているという実態があるだろうと、それを視察したことはあるか、ということであります。ウィークリー現場訪問は何百箇所と行っていますので、全て、どこの高齢者施設を視察して、どういう目的だったかを覚えてませんけれども、議員ご指摘のとおり、県営住宅における子育て支援については、確かに平成20年1月だったかと思いますが、それを目的に訪問してまして、子育て世帯として期限付き入居されている方々と意見交換をさせていただきました。
 その中で、子供たちの元気な姿を見ながら、子育て環境の厳しさ、あるいは住宅環境の難しさ、等々をお話したことを覚えています。
 しかしながら、高齢者が多数入居されている住宅については、その視察を目的に県営住宅を訪れたことは私の記憶の中ではまだ無いと思いますので、今後、確かに高齢者の施設化というのも、実態をしっかりと把握して、今後の対応を考えたほうが良いと思いますので、視察をしてみたい、と考えております。

 <要望>
 答弁ありがとうございました。知事、是非県営住宅、行ってください。高齢者だけではない、障害者の方々もたくさん生活されています。どんな不自由なことがあるのか、知事の目で直に見ていただきたいと思います。また直に知事の耳で声を聞いて欲しいと思います。また公営住宅だけではなかなかセーフティネット張りきれない、事実だと思いますので、関連施策を様々組み合わせてやっていくのはもっともです。ですから、建設部局だけだと厳しいです。そういう意味では、建設部局と福祉部局しっかり連携して、居住福祉の問題に取組んで頂けるようお願いしたいと思います。