1.平和教育について(1)

<質疑>
 本年は、戦後60年の節目の年であります。第二次世界大戦に対する歴史的な検証や戦後日本への総括とともに、県内でも、横浜大空襲を初めとする戦禍を改めて歴史にとどめる企画などがマスコミを賑わせました。しかし、戦争で辛酸をなめた方々の多くが亡くなったり、高齢になられたりで、戦争体験の風化を危惧する声も多く聞かれたところであります。
 本年7月23日から27日までの5日間、核兵器の廃絶と戦争やテロのない世界を目指す科学者らの国際組織、パグウォッシュ会議の年次大会が広島で開催されました。同会議のスワミナサン会長は、広島を選んだ理由として「広島と長崎の被爆者も高齢となり、平均年齢は73歳。地獄のような惨状を体験した被爆者の声を改めて胸に刻む必要があった。」と述べました。そして「核兵器を絶対悪と言い切る被爆者の声を次世代の人たちに伝え続ける平和教育が不可欠。」とも訴えました。
 パグウォッシュ会議のロートブラッド名誉会長は、1944年、ナチスドイツに核兵器開発計画のないことが判明すると、アメリカも核兵器開発をやめるべきだと訴えました。そして、科学者として原爆の開発計画に関与してしまった責任を痛感し、良心に従ってマンハッタン計画から離脱をしたのです。善と悪を分別し、妥協しない信念は、今も若い科学者たちのかがみとなっています。
 私は、「善悪の判断のできる若者を育てていくことが、テロ撲滅や核兵器廃絶の実現にとって非常に重要である。」というスワミナサン会長の言葉に強く共感をいたしました。核兵器がもたらす脅威を正確に教える教材や研究資料を備え、それらを活用した教育が、この神奈川でも行われるべきではないでしょうか。「平和教育」という言葉からイデオロギーのにおいをかぎ取り、拒否感を覚える人も、核兵器の恐怖と残虐性は否定できないと思います。



 そこで、知事にお伺いをいたします。

 平和な社会を築くために、次世代を担う子供たち、特に小学校高学年から中学生が、被爆者の体験を通じ核兵器の恐ろしさを学び、善悪を判断する力を身につけることは、非常に意義のあることだと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。


<答弁>
 今から60年前に署名された国連ユネスコ憲章は、その冒頭で「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」と述べております。私は、戦後60年の節目を迎えた今日、この言葉の精神をもう一度しっかりとかみしめてみることは大変有意義であると思っております。議員のお話にもございましたスワミナサン会長の言葉も、このユネスコ憲章の一節に通ずるものがあり、私も議員同様、その考えに大いに共鳴をいたしました。
 私は、さきの6定例会で、長崎で被爆した祖父と叔父の話をさせていただきましたが、幼いころ、何度か叔父から、原爆のすさまじい惨状について生々しい話を聞き、以来、私の心の中に強く焼きついております。世界で唯一の被爆国の国民として、核兵器の恐ろしさや平和のとうとさを次の世代と、世界の人々に伝えていくことは、我々大人の責務であると考えております。
 県内の幾つかの市町村では、小中学生を広島に派遣するといった取り組みもしていると聞いておりますが、こうしたことは、子供たちが平和というものを実感をもって学ぶ機会として大変有意義でありますので、ぜひこうした機会を広げていただきたいと思っております。
 平和な社会を築いていくために欠かせないことは、次代を担う子供たちがしっかりと善悪を判断する力を身につけていくことであり、そのためには、家庭や学校はもとより社会全体で、子供たちにユネスコ憲章の前文にうたわれた心を育てていくことが何より大切なことであると考えております。