<海外県政調査の報告>

所見または提言……あとがきにかえて(2)

2.マナーの徹底がもたらす利益。
 私たちは、5日間にわたり、吉永さんの運転するミニバンで移動をした。走行距離は1日平均300kmにも及んだが、過密とも言っていいスケジュールをこなせたのは、アウトバーンがあったからだ。以前は、速度無制限で知られたアウトバーンだが、近年は速度が制限される区間も増えてきた。それでも、最速レーンを走れば、ほとんどの区間で200km/h巡航が可能だった。
 トラックなどの低速車は、右端のレーンをきちんと隊列を組んで走っている。三車線あれば右端から中央に行くにしたがって流れが速くなっていく。速いレーンを走っていて後続車に追いつかれたら、素直に遅いほうのレーンに移らなくてはいけない。だから、速いレーンを走っていて前をふさがれたために、遅いレーンを使って追い越しをかけることなど考えられないし、違反である。そうした、マナーの徹底が、200km/h走行を可能にしているのだ。そして、それを喜ぶのはスピード狂ではない。移動の時間が短縮されることで利益にあずかる、すべての国民である。

 マナーといえば、私たちはこんな経験をした。フランクフルト市で、私たちは市の中心部の地下につくられた市営駐車場に車を入れた。「前向き駐車」という表示があったが、空いていたところはたまたま端っこで、どう見てもバックで入れないと入らない。やむをえずそうすると、たまたま通りかかった、まだ20歳台と思しき女性が厳しい口調でクレームをつけてきた。 「じゃあ、あんた、入れてみろよ」と反論したかったが(できない)、彼女はそのまま立ち去ってしまった(よかった!)。後ろに民家があるわけでもなし、これしきのことで、なぜ文句を言われなければならないのか、吉永さんに聞いてみると、「(駐車場の)壁が汚れるからですよ」。うーん、彼女もドイツなら、理由もドイツ!