2.生活習慣病対策について


<質問>  (1) 脳卒中の発症登録について

 神奈川県保健医療計画では、脳卒中の疾病予防から急性期・慢性期の治療やリハビリ、さらに在宅療養までを結ぶ医療連携体制の構築に取り組むこととしている。現在、県西部において地域連携クリティカルパスによるネットワークづくりが進んでいると承知しており、ICT化の導入とともに、今後、全県的に広がっていくことを期待しているが、一方で、脳卒中の年間総発症者数、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった種類別の発症者数が実数として把握されておらず、脳梗塞に対する効果的な治療薬とされている血栓溶解薬(t‐PA)についても、どの医療機関で、どのような患者に用いた結果、どのような効果あるいは逆効果をもたらしたかというデータがない。
 言ってみれば、本県が進めているクリティカルパス以前の基礎的な取組がこれまでなされてきていなかったということである。
 そこで、脳卒中に関する情報を収集し、本県がより効果的な脳卒中対策を行うために、地域連携クリティカルパスの取組とは別に、脳卒中の発症登録を行うべきと考えるが、所見を伺いたい。

<答弁> 黒岩知事

 次に、生活習慣病対策について、何点かお尋ねがありました。
 まず、「脳卒中の発症登録」についてです。
 脳卒中は、一旦発症すると長期にわたる治療やリハビリテーションが必要となり、後遺症が残ることも少なくないため、早期治療や発症予防の取組みが求められております。
 脳卒中については、発症メカニズムの解明が進み、症例に応じた治療が実施されていますが、今後は治療効果や長期的な予後を明らかにしていくため診療情報の共有化が必要であると認識しています。
 お話の脳卒中の発症登録は、急性期の治療から回復期のリハビリテーション、在宅医療、介護に至る長期にわたる情報管理が必要となります。
 また、実施にあたっては、登録の中心となる基幹的な病院の他に、かかりつけ医、医療機関、介護施設の参加も必要になるなどの課題もあります。
 現在、県では、脳卒中対策として、急性期から回復期、在宅医療に至る地域連携クリティカルパスの普及に取り組んでおり、このパスにより、患者情報の共有や蓄積もなされ始めております。
 今後、このパスの地域的な拡大と併せ、登録制度にもつながる診療情報の共有化と利活用の推進について、ICTの活用も含め、「医療のグランドデザイン」の中で検討してまいります。

<質問>  (2) 糖尿病の予防と合併症対策について
 昭和60年3月に健康県かながわの創造をめざした神奈川県地域保健計画を策定し、糖尿病対策が盛り込まれたが、それから四半世紀、糖尿病患者は増え続け、当時の基本理念は未だ達成されていない。
 「健康日本21」や「かながわ健康プラン21」において、“メタボ”になる原因をなくすことを狙って効果が出なかったわけだから、糖尿病の罹患者や重症患者を減らしていくためには、新たな具体的な取組が必要と考える。例えば、糖尿病が疑われる人に早期受診を促し、治療中の患者に治療を中断させない意欲をおこさせるプログラムを用意するなどの事業であり、それには、患者登録も不可欠である。このような疾病管理事業は、糖尿病の重症化を防ぐために極めて重要である。
 そこで、これまでの本県の糖尿病対策の取組について、効果が出ていない原因をどのように捉えているのか、認識を伺いたい。また、糖尿病患者が増えている現状を踏まえ、予防の取組をどのように強化するのか、さらに、糖尿病の重症化を防ぐために、患者や糖尿病が強く疑われる人等の登録はもちろん、こうした人々に対する継続的な治療などの疾病管理事業について、県としてどのように取り組んでいくのか、併せて所見を伺いたい。

<答弁> 黒岩知事
 次に、糖尿病の予防と合併症対策についてお尋ねがありました。
 糖尿病は、主に生活習慣に起因する慢性疾患であり、場合によっては、合併症である網膜症による失明や腎不全により透析に至ることがあります。
 一方、自覚症状が少ないことや直接の死因となることが少ないため、病気の理解が十分でなく、生活習慣を見直す保健指導に必ずしもつながっておらず、患者の減少に結びついていないものと受け止めております。
 県では、これまで、糖尿病予防に向けて、「かながわ健康づくり10か条」を掲げ、バランスのとれた食事や適正な体重の維持などの啓発に努めてまいりました。             
 糖尿病の予防には、食生活の改善が有効でありますので、「医療のグランドデザイン」において、医食農同源など、未病を治し健康寿命を延ばす「病気にならない取組みの推進」の視点から、検討を進めてまいります。
 平成20年度からは、メタボリックシンドロームに着目した特定健診やハイリスク者への特定保健指導が、医療保険者に義務づけられ、お話のありました、糖尿病が強く疑われる方の把握にもつなげられるようになったところであります。
 また、糖尿病の重症化を防ぐには、専門医療機関とかかりつけ医とが医療情報を共有しながら、継続的な治療を行う疾病管理が重要ですので、先ほどご答弁申し上げましたように、ICTを活用した診療情報の共有と利活用の推進によって、「医療のグランドデザイン」の中で幅広く検討してまいります。