■文教常任委員会 高校生の地域貢献活動について(平成18年11月2日)
<質疑一覧>


<質疑>
 学校教育の中での地域貢献活動について、何点かお尋ねしたいと思います。
 10月25日が地域貢献デーだったと聞きました。私の地元でも車で走っていましたら、道端でごみを拾っている高校生の集団を目撃しまして、なかなか感心だなと思っていたのですが、後からその日が県下一斉の地域貢献デーだったということを知りました。
 生徒による地域貢献の試みというのは大変良いことだと思うので、これを是非、持続、発展をしていただきたいと思いまして、何点かお尋ねしたいと思います。
 まずは、基本的な確認なのですけれども、高校生の地域貢献活動というのは何のために行っているのか、また、高校教育全体の中でどのような位置付けになっているのか教えてください。

<答弁> 高校教育課長
 地域貢献活動でございますけれども、昨年あたりから私どもは本格的な取組を学校の活動の中で始めたところでございますけれども、最近の子どもたち、特に都市部に生まれ育ったような子どもたちを見ておりますと、地域社会との接点が少ない、いろいろな人と接する機会がなかなかない、あるいは自然体験、社会体験を含めまして体験的な活動の機会が十分ではないと、このことは少し心配しなければいけない状態になってきているのではないか、そのような課題意識がかねてからございました。
 そういう中で何か社会に貢献すると言うか、人の役に立つような活動を学校の教育活動の中でも形にすることができないかということを考えました。そうした活動を通じまして、社会性であるとか、公共心、人間性、こうしたものを育成していくための一つの力になっていくのではないかということを考えまして、地域に貢献する活動であるとか、自主的な形で行うボランティア活動といったものを学校教育の中で大切にしていこうという基本の考えでございます。そうした考え方に対しまして、本格的には本年度からでございますけれども、全県立高校で地域貢献活動に取り組んでおります。
 位置付けといたしましては、特別活動における学校行事でございます。したがって、例えば文化祭、運動会あるいは修学旅行なども学校行事でございますけれども、これと同じような並びに位置付けまして、学校の地域貢献に関する活動として、生徒全員で取り組んでいただいているところでございます。




<質疑>
 文化祭や運動会と同じような学校行事としての位置付けということなのですが、年1回ということですか

<答弁> 高校教育課長
 本格的には本年度から1年間を通しまして、それぞれの学校としての活動計画を作成してほしいというお願いをしております。多くの学校では、例えば学期に1回というような形で年3回実施するという中で、生徒の立場からいえばそれぞれの学年に分かれて活動することも多くございますので、1、2回の活動というようなところから、さらには年間の計画の中で月ごとに活動の日を決めて、年間10回ぐらいというような形になりますけれども、数回参加をして活動をするような計画を立てて実施しているところもございます。




<質疑>
 先ほど高校教育課長の御説明の中で、ボランティア活動という言葉も出てきたのですけれども、ボランティア活動というものはこれとは別個の位置付けとしてあるわけですか。

<答弁> 高校教育課長
 私どもとして地域へ貢献する活動やボランティア活動を学校の教育活動にどのように位置付けていったら良いのか、様々考えを進めましたけれども、ボランティア活動につきましては、かなり自身の自発性、自主性というものが基盤になっているものだと考えます。そこでボランティア活動を強制してというような発想にたつのはいかがかと、これは生徒が自らやるのだという気持ちを持ってもらう、そうした働き掛けが重要だという考え方を持ちまして、地域貢献活動については学校行事として全員に経験していただくという中で、ボランティア精神も育てていきたいということです。したがってボランティア活動の方につきましては、情報の提供も含めまして、生徒がそういう活動をしやすいような環境づくりを整えていこうということで、例えば本年の6月に横浜駅西口の県民センターの中に高校生のボランティアセンターということで、高校生自身がいろいろ企画したり運営したりする場所ですけれども、そんなようなものを作りましたのは、環境的なものを整備していこうという取組の一つです。地域貢献活動とボランティアという二つの軸を持ちながら取り組んでいるところでございます。




<質疑>
 そこは理解しました。では、地域貢献活動の方の取組として、今年度、県立高校ではどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。

<答弁> 高校教育課長
 先ほど申し上げましたように、年間の活動計画というものを各学校が作成して、実施をいたしましたのは今年度が初めてでございます。その中でも、10月25日は地域貢献デーと名付けまして、可能な限りすべての高校がこの日に活動に参加をして行いたいという趣旨でございますが、そこは一つの象徴的な核にいたしまして、年間の計画を様々に作っていただいて進めていただくということでございます。
 各学校で様々な取組がございますけれども、多数の生徒を動かすということもございますので、地域の清掃や美化活動などが中心という形で進めております。学校によりましては例えば近隣の応援等として、植樹から下草刈り等、年間の中で段階的に進めていくような取組を進めているところもございます。




<質疑>
 今年の地域貢献デーは10月25日で、昨年と今年に設定したと聞いているのですが、成果として、どのようなものがありますか。

<答弁> 高校教育課長
 昨年は、試行という位置付けで「学校へ行こう週間」を設けておりますが、その中で10月14日に地域貢献デーを設定しましたが、試行ということでしたので、当日参加のあった学校は42校でございました。他の学校はその前後でというような形でございました。本年度は10月の下旬を「学校へ行こう週間」といたしましたので、その中の10月25日を地域貢献デーといたしまして、全日制で申し上げますと、152校中の142校がこの日に活動をしております。また10校につきましては定期テスト等の関係がございましてその前後の日程で行っているということでございます。
 先ほど申しました地域の清掃みたいなものが中心になっておりますけれども、例えば藤沢市にございます大清水高校などでは学校から歩いて15分ぐらいのところに旧モーガン邸という地域の文化遺産のようなものがございまして、2,000坪ぐらいの土地がございまして、庭園になっております。文化遺産になるような古い住宅が残っておりますけれども、地域の中でその保全活動のような市民運動がございます。そういうものと協力をして、当日は市民の方々もお出でいただきまして、一緒に下草刈りをしたり、枝落としをしたりというような活動をされました。あるいは伊志田高校などでは、隣に伊勢原養護学校があり、日ごろから交流があるようでございますが、この日は1年生全員が伊勢原養護学校の教育活動に何らかの協力をしたいということでグラウンドの整備とか教材教具の整備、食堂の整備等を行ったと聞いております。
 こうしたもののほかにもいろいろございますけれども、生徒が地域の中に出ていって、汗を流すという中で、自分たちが何か良いことができたという充足感があったと思いますし、また、地域の人たちから、あの学校の生徒は何か良いことをやっているようだなというように温かい目で見ていただけたという話もございましたので、そういう意味では成果が上がってきていると感じております。




<質疑>
 私も新聞を読ませていただいたりしたのですけれども、どちらかというと、お掃除系がほとんどなのかな、と。今、お話を伺いましたら、伊志田高校と伊勢原養護学校との交流のように、そうした角度でやっていただくというのは大変良いことだと思うのです。もちろん地域貢献デーというのは大変良い試みだと思うのですけれども、今の若い人たちは、高校生も含め社会とのかかわりが若干薄くなっているような気がするのです。
 そうした中、せっかく地域貢献活動をするのであれば、高校生自身が人の役に立ったというか、喜んでもらえたという実感とか手ごたえがすごく大切だと思うのです。人とのふれあいや本当に人の役に立つという実感を子どもたちに持ってもらうことは、もしかしたら一番のメリットなのかもしれないと思うのですけれども、その辺はどのようにお考えでしょうか。

<答弁> 高校教育課長
 おっしゃるとおりでございまして、例えは、「情けは人のためならず」ということわざがございますけれども、やはり自分に返ってくるものだと私も考えております。高校生の中には、自主的なボランティア活動に非常に熱心に取り組む子どもたちも実はいるのですが、それは一部でございまして、多くの生徒がそのような形に、なかなかなっていないような気がいたします。
 心の中では何か少しやってみたいと思ってみてもどうしたら良いのか分からないという子どももいる中で、地域貢献活動ということで、少し御膳立てをしてあげて、その形をつくってあげて、入っていくということも必要だろうと考えたところでございます。
 そうしたことで今、進めておりますけれども、世の中の人の役に立つ、喜んでいただけるという側面もありますけれども、生徒自身がそういうことを体験すること自体に価値があると考えているところでございます。




<質疑>
 高校生ですから、自分に自信を失ったり、学校生活の中で閉塞感にさいなまれたりということもあると思うのですけれども、そういうときに人の役に立つ喜びというのを知るというのは何より大きな地域貢献のメリットなのではないかと思うのです。黙々と道路にこびりついたガムをはがしていくというのもすばらしい行為だとは思うのですけれども、本当に目の前の人に喜んでもらうということを味わってもらいたいと私は思うのです。それがこれから長い人生を送っていく彼らにとって何よりの心の財産になるのではないかというような気もしています。
 この高齢社会でも、自分の家にはお年寄りがいないという環境の中にいる高校生は多いと思うのですが、高齢者とのふれあいというのが、恐らく生徒たちの心の中にいろいろな気持ちを芽生えさせるのではないかと思うのです。
 例えば高齢者が多くいらっしゃる施設などで、貢献活動というのは行われているのですか。

<答弁> 高校教育課長
 これは地域貢献活動の一部でもございますけれども、いろいろな機会を通してやっていただきたいという気持ちもございますので、部活動あるいはそれぞれの学校の特色を生かしてというような形でいろいろなことがございます。例えば吹奏楽や合唱、ハンドベルといったものが高齢者施設などを訪問して、慰問演奏をするというようなことは、かなり様々な学校で行われております。
 また、地域貢献活動の御報告をいただいた中で、具体的には神奈川工業高校でございますけれども、電気科の生徒が一人暮らしの老人のいらっしゃる御家庭へお邪魔をいたしまして、例えば蛍光灯を取り替えることも老人の場合、難しいことでもございます。蛍光灯の取替え等をしたい、あるいはコンセントが壊れているというようなものを修理すると、技術そのものは大変易しいものかもしれませんけれども、そうしたようなことが行われているという報告もいただいております。
 あるいは、農業高校等で農業クラブがいろいろなものをやっておりますけれども、相原高校の例でございますが、酒まんじゅうやマドレーヌといったものをつくった際に、地域の高齢者のお宅にお届けをして、大変喜ばれているというようなお話も聞いておりますので、すべての高校でという形ではございませんけれども、学校の特色ですとか、学校のすぐそばの高齢者の施設をうまく結び付けながら、各学校が工夫して取組を進めております。




<質疑>
 県の関係であれば、たとえば古い県営住宅は草地なども多く、高齢者は足腰がしんどく手入れもできないという場所が結構あり、本当に大きな悩みになっています。そんな県営住宅や、高齢化の著しいところで、高校生が地域貢献活動で頑張ってもらうと非常に良いのかなと思ったのです。
 今、電気科の高校生が蛍光灯やコンセントを取り替えたりといったお話を伺ったのですけれども、若い人たちに手伝ってもらえたら有り難いというのはあると思うのです。そこで、本当に喜んでもらえる顔が間近で見られるのではないかと思うのですが、そういった事例というのはありますか。

<答弁> 高校教育課長
 現状ではそういった例はまだ聞いておりませんけれども、地域貢献活動は「地域」という言葉がキーになっておりますので、学校がある周辺地域にはいろいろな施設や機関があるのだろうと思うのです。したがって、この活動が発展していくためには、地域と結び付いていくというのが一つのキーになると考えておりますが、まだまだ始めたばかりですので、各学校はそういう機関等が地域にあることに十分気付いていないと思います。先ほど申し上げました大清水高校のような例は、ある意味気付いた例だと私は思いますけれども、もっと気付いていただきますと、委員が御指摘のようなお話にも発展していくのだろうと思います。また、ボランティアも行ってございますけれども、まずは小さなところから出発していくということも重要でございますので、我々はいろいろな情報を学校に出していきたいと思っております。




<質疑>
 高校教育課長がおっしゃるとおりだと私も思います。
 せっかくなら求められていることをしてあげた方が本当に喜んでもらえるのではないかと思いますので、是非、いろいろなことを検討していただきたいと思います。また、地域のニーズをとらえていくということも大事だと思うのですけれども、この辺は何か学校で工夫をしていることはあるのでしょうか。

<答弁> 高校教育課長
 幾つかの学校で、そうした意味での取組が非常に進んでいるところがございまして、例えば逗子高校で、逗子高等学校ボランティアセンターと呼んでおりましたが、最近名前を変えましてサービスライニングセンターと名付けられましたけれども、社会貢献をすることを意識的に行っていくといことを学ぶということだったと思うのですが、地域からいろいろなリクエストがあったときに、そうしたものにこたえて、生徒が企画をしていくような活動を先進的に進めている学校もございます。
 あるいは、秦野南が丘高校などではボランティアバンクという組織が校内にございまして、地域からいろいろなリクエストが来ますと、所定の場所に小さなカードで日にちとか内容などいろいろなことが書いてありまして、そういうものに参加できる人がいたら参加してほしいとメッセージがあり、そのバンクに半分以上の子どもが登録していると聞きましたけれども、地域からは非常に有り難く思われているというお話も聞いております。
 こうした形の仕組みを校内に取り入れている学校はまだ少ないですが、そうした取組が始まっておりますし、徐々に広がっていくような気配もございますので、見守っていただければと思います。




<質疑>
 大変すばらしい取組だと思いますので、少しでも県内の高校に広がっていくように、これらも頑張っていただきたいと思います。
 また、地域貢献活動のメリットの一つは、学校を中心にした地域の連帯感が深まるということだと思います。そのためには、地域の人たちと一緒になって取り組んだり、地域の小中学校と連携したりすることも必要だと思うのですけれども、そういった観点で地域の連携でうまくいったということがあれば教えてください。

<答弁> 高校教育課長
 追浜高校の定時制課程の例ですけれども、追浜駅前のガムはがしを計画したのですが、それは学校だけではなくて、自治会の連絡協議会や商店街、あるいは地域の企業関係の方々と一緒に意見交換会を作り、その中で何をやろうかというような話があり、駅前のガムはがしをやろうという話になったと聞いております。定時制高校ですから活動は夜でございますが、7時半から8時半ぐらいの1時間くらい、地域の方に出ていただきました。生徒と同様にといいましょうか、生徒以上に熱心に活動に取り組んでいただいたというようなことでございました。
 地域とのいろいろな結び付きが非常に重要だと思っておりますので、これは一つの例でございますけれども、そのほかにもいろいろな形で、これらも広がっていくと考えております。




<質疑>
 ありがとうございます。今後さらに推進をし、日常的に継続的にやっていっていただきたいと私は思うのですけれども、これからどのように充実させていくのか、また、推進していくのかお聞かせください。

<答弁> 高校教育課長
 学校によってはセンター的なものを校内に設置し、生徒がいろいろな計画を作成したり、企画を立てたりするというような取組もございますので、文化祭ですとか修学旅行といったものも学校だけで計画を作るのではなく、生徒にもかなり主体的に参加させて、企画もさせるというようなこともございます。こうしたことは地域貢献活動についても全く同様なことが言えると思いますので、是非、そうした形で企画し、考え、地域に発信していくところまで生徒が主体的にやっていただけるような形に進んでいけばすばらしいと思っております。そうした進め方を今後も目指してまいりたいと思います。




<要望>
 学校でいろいろな形で進んでいるということが分かりました。生徒たちが人に喜んでもらうということを実感できるというのは本当にすばらしいことだと思いますし、今後もこの取組を充実、発展させていただきたいと思います。また、そのことが地域貢献、社会貢献に一生懸命になれる人材を育成していくことにつがなると思いますので、これからも推進をお願いいたします。