6.急傾斜地崩壊対策について(1)

<質疑>
 ご承知のとおり、わが国は国土の4分の3が山地で占められており、急峻な地形と脆弱な地質、加えて降水量が多いことから、毎年のように、多くの土砂災害に見まわれております。
 記憶に新しいものでは、昨年7月に、九州地方を襲った集中豪雨があります。九州各地では、多くの土砂災害が発生し、熊本県水俣市では、一瞬にして、15名もの尊い人命が失われるという、極めて痛ましい被害が発生しております。
 幸いにして本県では、近年、人命にかかわるような土砂災害は、発生しておりませんが、土砂の崩落は、小さなものも含め、昨年は、約150件を数え、これは自慢にはなりませんが、全国のトップとなっていると聞いております。

 また、本県は大変人口密度が高く、特に、がけ地が多く分布する県東部に人口が集中しておりますので、雨が降るたびに、多くの県民が土砂災害を危惧しております。
 このような状況において、危険な斜面地の周辺にも、数多くの住宅等の立地が進んでおり、斜面地の安全確保は、本県にとって、重要な施策の一つとなっております。

 そこで、急傾斜地崩壊危険区域内で行われる、民間宅地開発における斜面の安全性の確保について伺います。
 私の住んでいる横浜市や、これに連なる横須賀市・川崎市には、起伏に富んだ丘陵地が多くあります。とくに横須賀市などは、がけ地に囲まれた地域、いわゆる谷戸の多いところでありますが、近年は、市街化の進展により、この土地利用の少なかった、谷戸の奥までも、開発されるようになっております。
 危険ながけ地である、急傾斜地崩壊危険区域において、開発行為などで、掘削や盛土を行う場合には、都市計画法に基づく開発許可と、急傾斜地法で知事の許可が必要とされ、当然、許可が無ければ工事ができないこととなっております。

 この許可を受けた開発業者が、許可内容どおりに工事を行えば、問題はないのでありますが、近年の厳しい経済状況もあってか、工事着手後に、資金繰りが悪化してしまう等の理由により、工事が中断され、土砂崩落の危険が放置されたままの状態、なかには、工事がいつ再開されるかも分からず、周辺住民が、日々、がけ崩れの不安に悩まされている、危険な現場も見受けられます。


 そこで知事にお伺いいたします。急傾斜地崩壊危険区域において、工事を中断して、危険な状況にある開発行為について、急傾斜地法に基づく、許可権限を所管する県として、斜面の安全性の確保を、どのように考えているのか、所見をお伺いいたします。

<答弁>
 近年の厳しい経済状況の中で、急傾斜地崩壊危険区域における開発工事が、開発業者の資金繰りの悪化などによって中断されている例があることは承知をしております。
 中断により、危険な状況にある工事への対応といたしましては、急傾斜地法を所管する立場からは、中断に至った理由や今後の安全対策等について、開発業者から事情聴取するとともに、必要に応じて、急傾斜地崩壊防止工事の実施について、指示、勧告を行なっております。

 また、開発業者に対し、現場把握を十分に行なうことや、地元住民の方々の不安感を取り除くための地元説明会を開催することなど、基本的に開発業者の責任において対応するよう行政指導を行なっております。
 さらに、同趣旨のことは、都市計画法に基づいても行なうことができますので、急傾斜地法の許可権者と都市計画法の許可権者とが共同して対応することとしております。

 このような対応によっても、なかなか改善が見られない場合には、開発許可権者と共同で、直接現地に立ち入るパトロールの実施や、その結果を踏まえた具体的な崩壊防止工事等の指示を行なうなど、お互いに意思疎通を十分に図り、危険度、緊急度に応じた指導、監督の強化に努めてまいります。