1.地域交通の拡充について(1)

<質疑>
 新総合計画(案)によりますと、神奈川県では昨年、65歳以上の人の割合が15%を超え、本格的な高齢社会に突入したとのことであります。そして、2015年には、65歳以上の高齢者が4.3人に1人になる。このようにも予想されております。
 そして、そのときには「歩道の段差の解消や駅舎へのエレベータの設置など、まちのバリアフリー化が進み、障害のある人や高齢者など、だれもが自由に移動し、積極的に社会参加できるようになっています」と書かれています。

 ところが、「だれもが自由に移動し、積極的に社会参加」するために不可欠な、交通手段、交通政策については、この新総合計画のどこを見ても触れられていないのです。少なくとも戦略プロジェクトには見当たらず、主な施策232に「公共交通整備の総合的な推進」とありますが、高齢者が「自由に移動し、積極的に社会参加」できるようになるとは読み取ることができません。
 わが国と同様、本格的な高齢社会を迎えている西欧諸国の都市の、特にその中心市街地は、日本の都市とは比べ物にならないほど、多くのお年寄りでにぎわっています。
 広場を囲むように公共の施設が配置されている。だから人が集まりやすいという、街そのものの構造によるところも、もちろんありますが、小型バスなどの公共交通網が、市内あるいは郊外の細い街路にまで張り巡らされているということも大きな要因であると言われています。

 地元の保土ヶ谷でおばあちゃん達の井戸端会議に参加したことがありました。そのとき、或るおばあちゃんから、こんなことを言われたのです。「横浜は市バスの優待パスがあるけど、バス停まで何十分も、急な坂道や長い階段のある道を歩かなくてはいけない。だから使ったことがない」と。
 結果として、お年寄りの行動範囲が自宅とその周辺に限定され、社会参加の機会を奪われ、それが地域の活力を殺ぐ一因ともなってしまっています。
 県内には、一定の人口集積があり、かつ、高齢者が多いものの、道が狭いために通常のバス運行が行なわれていない地域もあれば、過疎化によって交通事業が成り立たないというところもあります。



 そこで、知事にお伺いします。「だれもが自由に移動し、積極的に社会参加」できる社会をつくるために、県として、これからの地域交通をどのように構築していくのか、基本的な考えをお伺いいたします。

<答弁>
 はじめは、地域交通の拡充について、いくつかお尋ねがありました。「だれもが自由に移動し、積極的に社会参加」できるよう、これからの地域交通をどのように構築していくのか、とのお尋ねであります。

 高齢者をはじめ、だれでも自由に移動できる社会を実現していく上で、地域交通の役割は、大変重要であると認識をしております。
 地域において、多様な交通手段を確保するに当たっては、地域それぞれの実情や住民ニーズに応じて、きめ細かく検討していくことが、必要だと思います。
 そのため、地域交通の具体化については、基本的に市町村が主体となって進めることが必要であり、市町村の取り組みが促進されるよう、支援をしていくことが県の役割である、と考えております。

 県といたしましては、既に、生活交通確保の視点から行なわれる市町村の取組みに対する財政的な支援、2つ目に、市町村が地域交通確保に向けて設置した、各種委員会への参画による技術的な支援、3つ目に、県内の全市町村で構成し、地域交通のあり方等を研究する「神奈川県地域交通研究会」などの場を通じた、市町村に対する、県内外の特徴ある先進事例についての情報提供などを行なってきたところであります。

 今後も、地域交通の取組みの重要性は高まってくると思われますので、県といたしましても、引き続き、これらの取組みを進めることによって、県内の各地において、市町村による地域交通の構築が図られるよう、支援を行なってまいりたいと考えております。