<海外県政調査の報告>資 料

ドイツの環境税制改革(1)

石油と電力エネルギーに対する課税と年金保険料の引き下げをリンクさせたドイツの「環境税制改革の導入に関する法律」が1999年4月1日に施行されてから3年が経過しました。石油と電力の消費に課税することで、一方では環境負荷の低減を図り、他方、その税収を年金基金の補助金に充てています。それが給与所得者と企業の双方が負担する年金保険料額を軽減させ、結果的に企業による雇用創出が可能になりました。こうした環境負荷の低減を雇用促進と結び付けるこのシステムは「二重の配当」と呼ばれています。
策定当時から評価の分かれる制度でしたが、連立与党、及びドイツ環境・自然保護連盟(BUND)対野党及び産業界という対立の構造は変わらず、現在も議論が続けられています。しかし、問題を内包しながらもすでに第4段階(2002年1月1日)まで進み、2003年末で終える全5段階の環境税(エネルギー税)の引き上げは着実に実行されています。

■環境税と年金保険料
環境税の対象になるのはガソリン、ディーゼル、暖房用軽油の石油精製品と天然ガス、液化ガス、それに電力です。1999年の第1段階から2003年の第5段階まで例外はありますが、毎年加算されています。
石油税

ガソリンとディーゼルには一律6ペニヒ(約3.6円)/リットルが課税され、これが毎年加算され、5年間で合計30ペニヒ(約18円)/リットルとなっています。暖房用軽油、天然ガス、液化ガスは第1段階でそれぞれ4ペニヒ(約2.4円)/リットル、0.32(約0.2円)ペニヒ/kWh、2.5ペニヒ(約1.5円)/kgが課税されましたが、それ以降の課税は免除されています。
電力税

新税として第1段階で2ペニヒ(約1.2円)/kWhを課税、第2から第5段階まで毎年0.5ペニヒ(約0.3円)/kWhを加算し、合計で4ペニヒ(約2.4円)/kWhとなります。
これらの税収額は初年度が85億マルク(約5,100億円)、次いで172億マルク(約1兆円)、224億マルク(約1.3兆億円)、143億ユーロ(約1.7兆円)、172億ユーロ(約2兆円)となり、最終的に総額560億ユーロ(約6.7兆円)に達する見込みです。
例外措置
  • 年間を通して稼働率が70%以上のコージェネレーション設備では石油税が免除
  • 水力、風力、太陽光、地熱などの再生可能エネルギーは電力税を免除。
    (再生可能エネルギーからの電力を直接、最終消費者として利用することと、再生エネルギーからの電力を提供する企業から供給をうける場合のみ)
  • 上限0.7MWの定格出力装置が生産する電力は電力税を免除
軽減措置:
  • 1999年4月1日以前に設置された夜間電力を利用する蓄熱式暖房設備が消費する電力には、通常の50%の1ペニヒ(約0.6円)/kWhを課税
  • 工場内交通と登山鉄道を除く鉄道とトロリーバスが消費者する電力に対して通常の50%の1ペニヒ(約0.6円)/kWhを課税
  • 製造業者と農林漁業事業者に対して、年間の電力税(例えば50,000kWh以上)と暖房用燃料税が1,000マルク(約6万円)を超えた分に対しては通常の税率の20%。この場合この部門の暖房用燃料税は0.8ペニヒ(約0.5円)/リットル、電力税は0.4(約0.2円)ペニヒ/kWhとかなり軽減されます。
還付規定
  • 製造業の企業が支払う環境税額が年金保険料の減額分の1.2倍を超える場合、その差額が還付されます。(環境税負担と年金保険料減額分はほぼ同額とします。)
このように多くの免税および軽減措置が規定されているのは、ドイツ産業の競争力がエネルギーコストの急上昇で阻害されることを恐れた産業界の激しい抵抗に連邦政府が配慮したためです。それでも、新税と税の引き上げがもたらす初年度の環境税の予想収入は113億マルク(約6,780億円)でしたが、これは前年のエネルギー税による税収840億マルク(約5兆400億円)の13.5%を占めます。
環境税制改革に基づき、税収を年金保険料に充当すると、同改革導入前まで20.3%だった労使双方の年金負担率は徐々に減少し、第5段階までに1.5%ポイント減の18.8%に下がります。その他に2億-3億マルク(約120-180億円)を再生エネルギー開発への助成金とすることが決まっています。