がれき処理という難問にどう向き合うのか
   
科学的知見の結集で安全の確保を
(1月26日)

 苦しみは分かち合って当然という感傷だけでは、幼い子を持つ親は納得せず、むやみに恐れて拒絶すれば、被災地の人々をさらなる絶望の淵に追い込むことになる。
 環境省が主導する津波がれきの広域処理。昨年末に黒岩知事が応じる姿勢を見せたものの、強硬に反対する人々の抗議で、先行きは不透明なままだ。
 津波がれきや、それを燃やした際に発生する焼却灰の放射能測定結果を岩手県と宮城県が公表している(別表)。もちろん、これは一例に過ぎず、数値にも開きが生じているが、東京都の一般廃棄物の焼却灰から検出された放射性セシウム濃度が平均で1,786ベクレル/kg(多摩地域)〜3,005ベクレル/kg(23区、いずれも2011年9月8日測定)と比べても、意外に低いことがわかる。
 私は、黒岩知事が示した、震災前から通常の廃棄物として処理されていた(放射性物質として扱う必要のない)1kgあたり100ベクレル以下という受け入れ基準は、総量規制等に配慮すれば、ほぼ妥当なものと考えている。
 しかし、津波がれきを神奈川県で処理することに不安や疑義を持つ県民が存在する以上、冷静かつ科学的な検証が不可欠だと思う。
 現地にプラントを作って処理すべしというご意見もいただいた。被災地の雇用にもつながるのではないかと。もっともなご指摘である。陸前高田市の戸羽太市長が、がれき処理専門プラントの建設を岩手県に申し出たところ、法的に困難と門前払いされたらしいが、まさに非常時なのだから「超法規」も必要だろう。
 しかし、津波がれきの量は、岩手県で476万トン、宮城県で1,569万トンと聞く。岩手県は処理能力の約11年分、宮城県は約19年分だ。これからプラントを建設しても、容易に追いつく数字ではない。
 これには、反原発の論客である京都大学原子炉実験所の小出裕章助教も、被災地の施設で処理しきれない分については、全国で引き受けるしかないと言っている。そこには、被災地で集中処理をすれば、そこの子どもたちに被曝も集中してしまう、という思いがあるようだ。
 小出氏は、全国のごみ処理施設で焼却する場合は、放射能を捕捉できるフィルター等を取り付けた上で、綿密なテストを行う必要があると説く。同時に、放射性物質を安易に産廃処分場に埋めてはダメだとも。
 焼却施設のバグフィルターで放射性セシウムの飛散は防げるのか。セシウム以外の放射性物質の心配はないのか。国が埋め立て可能としている8000ベクレル/kgという基準値は果たして信用できるのか。横須賀市の「かながわ環境整備センター」に埋めることがベターなのか。さまざまな懸案に対して、科学的知見を総動員し、事態を前に進めなくてはならない。被災地の一日も早い復興のために。