景観は住民が育てるもの

(2008年7月1日)
昭和50年代に造られた建売分譲住宅地。
住宅のデザインは平凡だが、景観保全のためのルールが厳しく、落ち着いた街並みが保たれている。

 横浜市が6月30日まで、「横浜・人・まち・デザイン賞」の募集を行っていた。これは、それまでの「まちなみ景観賞」と「まちづくり功労賞」を平成11年に統合したもので、今回で第4回目の実施となる。ちなみに平成15年の前回は、「まちづくり活動部門」で、私の地元・旭区の「旭ジャズまつりの企画・運営」や保土ヶ谷区の「西谷商店街での空き店舗活用による地域コミュニティ事業」など6事業が受賞作品となっており(「作品」という呼び方に違和感はあるが)、うれしい限りだ。
 一方、「まちなみ景観部門」の受賞作品は、日産自動車横浜工場ゲストホール・エンジン博物館、横浜港大さん橋国際客船ターミナル、日本郵船歴史博物館、馬車道のガス灯、フェリス女学院中学校・高等学校1号館、マーマしのはら保育園、天王森泉公園となっていて、それぞれが素晴らしい建造物であるということに異論はないが、気になったのは、それらが一点物の、まさに「作品」であるというところだ。
 横浜市の景観形成施策が「点」を重視していることは承知しているが、日本の景観を再生するには、いわゆる一般市街地や都市周縁部の景観を絶望の淵から救い出すことが不可欠と考えている私にとっては、いささか物足りない結果になっている。以前の「まちなみ景観賞」時代には、大規模団地や建売分譲住宅地などの受賞が見受けられたが、それらにしてもほとんどが新しく造られた「街」ばかりだ。
 この賞の応募要件が「おおむね10年以内に新しく造られたものや、歴史的建造物等再生されたものであること」となっているから仕方がないが、景観はデベロッパーが創るだけではなく、住民たちが時間をかけて守り育てていくものである。時の流れに抗いながら何とか良好な景観を維持しようと踏ん張っていたり、無秩序な家並みを少しずつでも調和のとれたものにしようと工夫したりしている自治会・町内会などが、もっと注目されてもよいのではないか。歩きながら「いい街だなあ」と思わせてくれるのは、たいがい、そんな街なのだから。